いつまでも健やかに

シニア世代の方々にとって、健康な口腔状態を維持することは非常に重要です。
なぜなら、口腔は私たちの健康と生活の質に直接的な影響を与えるからです。

口腔の健康状態が悪くなると、食事摂取に制限が生じたり、痛みや不快感を伴う可能性があります。また、口臭や歯の色素沈着などの美容的な問題も発生することも。
さらに、口腔の健康状態は全身の健康にも影響を及ぼすことが知られています。歯周病などの口腔疾患は、心臓病や糖尿病、呼吸器疾患などとの関連が指摘されています。

したがって、シニア世代の方々は口腔ケアに特に注意したいところです。
日常的な口腔ケアの実践、定期的な歯科検診の受診、健康的な食事の摂取など意識したいところです。
適切な口腔ケアの習慣を身につけることで、虫歯や歯周病のリスクを低減し、口腔の健康を維持することができますよ。

シニア世代で起こるお口の問題

年齢とともにお口の機能が衰えてくるものです。若いころにはなかったような様々な問題が起き、生活の質を落としてしまうことも。
そのため、家庭でのケアだけなく、定期的に歯科医によるケア、衛生管理を受けることをおすすめします。

歯に汚れが蓄積しやすくなる

加齢現象によって唾液の分泌が減るだけでなく、持病で複数のお薬を飲むことで、副作用によりさらに唾液の分泌量が減ってしまいます。
そうすると、唾液によって口腔内の汚れが十分に洗い流されないため、歯に汚れが溜まりやすくなります。

歯周病の悪化

歯周病はシニア世代が歯を失う最大の原因です。さらに、心筋梗塞や脳卒中、腎不全などの全身の疾患を引き起こす原因にもなります。
このような怖い病気であるにもかかわらず、歯周病は虫歯と違い痛みがほとんどないため、気づかないうちに深刻な状態に進行しているかもしれません。
歯周病羅漢率は年齢を重ねるうちに高くなり、55歳以上は55~60%となっています。

虫歯のリスク

唾液が少なくなると歯垢が溜まりやすくなります。歯垢が溜まると歯茎が下がり、露出した歯根に虫歯ができることも。

口臭

唾液が少なくなり、口の中が歯垢や汚れが溜まりやすくなるのと、歯周病や虫歯の悪化、さらに細菌の温床になっている入れ歯から強い口臭が出やすくなります。

口腔内の粘膜トラブル

唾液で粘膜の保護ができなくなると、口内炎や口角炎を起こしやすくなります。ケアが不十分だとカンジダ症も引き起こします。

飲み込む力の低下

口腔の筋力低下により飲み込む機能も低下してしまいます。食事をこぼしたり、むせたりすることが多くなります。

歯を失うことによる影響

歯を失うと入れ歯になりますが、1本の歯を入れ歯にすると噛む力は約10%も落ち、総入れ歯だと約70%落ちるといわれています。
噛む力が落ちると固いものが食べられなくなるため、”嚙み応え”がなくなり、食事のおいしさを感じられなくなってしまうのです。
それだけではありません。噛む力が弱くなると唾液の分泌量が減ってしまいます。
唾液の分泌量が減り、食べ物がのどを通りにくくなると、食べ物を飲み込みにくくなり、消化が悪くなってしまいます。
そうすると栄養状態が悪くなり、体力や筋力も低下するので、全身の健康にも大きな影響を及ぼしてしまうのです。

また、口の中が乾き、細胞が増殖しやすくなります。舌苔(ぜったい:舌の表面に付着する白い苔状のもので、垢のようなもの)が増えやすくなり、口臭も強くなりがちです。
このように口の中の衛生状態が悪化しやすくなり、歯周病や虫歯にかかりやすくなってしまいます。

日常のオーラルケアの重要性

口の中にはたくさんの細菌が存在します。唾液1gの中には1000万個、歯垢1gの中には1億個の細菌が存在するといわれています。
オーラルケアをしないと汚れや細菌が口の中に溜まり、虫歯や歯周病になりやすくなります。
また、オーラルケアは口の衛生状態を保つだけにとどまらず、口腔機能の低下を防ぐことも目的です。
日ごろからきちんとしたオーラルケアが重要だということを認識しましょう。

正しい歯磨きの方法と歯ブラシの選び方

歯ブラシを選ぶ際は、年齢や口腔内の状態に合わせたものを選びましょう。
硬すぎると歯茎を痛める原因になるため、やわらかめがおすすめです。また、ヘッド部分は小さい方が奥まで届いて磨きやすいでしょう。
磨くときは、ブラシをしっかり歯面もしくは歯と歯茎の境目に当てて、毛先が広がらない程度の軽い力で小刻みに動かします。
効率よく歯磨きしたいなら電動歯ブラシがおすすめです。
回転式や音波式などさまざまな種類があります。歯磨き粉を少しずつつけて、数秒間ブラシを当てて1本1本丁寧に磨きましょう。

歯磨き粉の選び方

歯磨き粉にもさまざまな種類があり、配合されている成分も歯磨き粉毎に異なります。
歯周病予防には、口内の細菌に対して高い殺菌作用のある成分が配合されている歯磨き粉がおすすめです。
殺菌成分としてよく配合されているものには「IPMP(イソプロピルメチルフェノール)」「CPC(塩化セチルビリジニウム)」です。
IPMPは複数の細菌が集まってできるネバネバした膜(バイオフィルム)内にいる殺菌まで殺菌する作用があります。
CPCはIPMPのような殺菌作用はありませんが、口内に浮遊する細菌に対して強い殺菌作用があります。
すでに歯周病で歯茎に炎症がある場合、研磨剤によって歯茎を傷つけてしまうかもしれないので、低研磨や研磨剤無配合の歯磨き粉がおすすめです。

デンタルフロスの重要性

歯ブラシだけでは落としきれない歯と歯の間の歯垢を落とすのにデンタルフロスが有効です。
多くの歯科医がデンタルフロスの利用をおすすめしており、歯間にたまった歯垢を除去することで歯周病や虫歯、口臭予防になります。
デンタルフロスにはホルダータイプトとロールタイプがあり、それぞれ特徴があります。

ホルダータイプ

ホルダータイプには前歯に対して使いやすいF字型と奥歯・前歯共に使いやすいY字型があります。
デンタルフロスを初めて使うならホルダータイプが使いやすいでしょう。

ロールタイプ

使用するときに使いやすい長さにフロスを切り取り、左右の指に巻きつけて使います。ワックスが付いているタイプと付いていないタイプがあり、ワックスタイプは歯間に入りやすく詰め物をしている方におすすめです。
ノンワックスタイプは水分を含んで繊維が広がることで、歯間にフィットし汚れを落としてくれます。詰め物がない方におすすめです。

デンタルフロスの使い方

前後に動かしながら、ゆっくり歯と歯の間に挿入していきます。力いっぱい入れようとすると歯茎が傷ついてしまうので、注意しましょう。
歯茎に少し触れるくらい挿入できたら、歯の側面にあわせてフロスを沿わせて食べカスや歯垢を取っていきます。
歯間に残った歯垢は2~3日で石灰化が始まるといわれ、時間が経つと取れにくくなります。そのため、1日に1回はデンタルフロスを使って歯垢や食べカスを取るのが望ましいです。
タイミングも寝る前をおすすめします。

入れ歯のお手入れ方法

入れ歯も歯と同じように食べカスや歯垢がつきます。毎日のお手入れで清潔にしておくことが大切です。

毎食後のお手入れ

落として破損したり、排水口に流したりしないように注意してください。洗面器などに水を張っておくといいでしょう。
小さな入れ歯でも必ず外してから、手のひらに乗せて洗面器の上で義歯用歯ブラシを使って磨きます。力を入れすぎないように注意しながら磨いてください。
歯肉に接する部分を磨きすぎると、隙間ができてしまいます。

就寝前のお手入れ

ブラシを使って流水でキレイにします。次にぬるま湯に義歯用洗剤を入れて、入れ歯を浸漬します。洗浄剤を使うことで歯磨きでは落としきれない汚れや細菌を除去できます。

入れ歯周りのお手入れ

金属部分をかける歯や入れ歯と接している歯は汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病の恐れがあるので丁寧に磨きましょう。

歯科医院での定期的な検診とケア

大手生活用品メーカー・ライオン株式会社の調べによると歯科医院に1年に1回以上定期的に歯科検診を受けている人は44%だそうです。
年代別では60代が最も多く、歯のトラブルが増えてきたことがきっかけで、定期検診に通うようになったのが原因の一つとして考えられます。
歯科医院での歯科検診は、検査で口腔内に異常があった場合、治療を進めていくだけではなく、予防も目的としています。
歯科医院で歯科健診を受けることで「今の状態を維持するための予防」と「疾患の重症化を予防」することが可能です。
心身とお口の状態を分かってくれている、かかりつけ歯科医をもって、定期的に健診を受けることで、生涯おいしく食事を味わい、健子的な生活を送ることができるでしょう。

まとめ

シニア世代のオーラルケアは非常に重要です。なぜなら、年齢とともに口腔の健康に関わる様々な問題が発生する可能性が高まるからです。
シニア世代はむし歯や歯周病のリスクが高まります。唾液の分泌量の低下により、むし歯や歯周病の発症リスクが増加します。
しかし、適切なオーラルケアを実践することで、これらの問題を予防することができます。

さらに、口腔の健康は全身の健康にも密接に関連しています。歯周病は心臓病や糖尿病、呼吸器疾患などの慢性疾患との関連が指摘されています。
口腔内の感染や炎症が全身に広がることで、健康状態が悪化する可能性があります。したがって、口腔の健康を維持することは、全身の健康と生活の質を向上させる重要な要素です。

できるだけ自分自身の歯を長く保つことが望ましいです。自然な歯は咀嚼や話すという日常の機能において重要な役割を果たします。
入れ歯や義歯などの補綴物を使わずに、自分自身の歯で快適に食事を楽しむことができれば、生活の質が向上します。
そのためには、定期的な歯科検診や適切な口腔ケアを通じて、歯と歯茎の健康を保つことが不可欠です。
したがって、日常的な口腔ケアの重要性を理解し、定期的な歯科検診を受けることをおすすめします。
歯科医師の指導のもとで適切なオーラルケアを実践し、口腔の健康を維持することで、快適で健やかなシニアライフを送ることができるでしょう。